「偽物」なのに1日2億円超が殺到...イーサリアム界を揺るがす新型「暗号資産ガチャ」の正体

概要:「フェイク・ワールド・アセット(FWA)」は、イーサリアム上のオンチェーン版ガチャだ。料金を払って回し、ランダムなNFTを獲得する仕組みで、ローンチ4日でガス代消費量がチェーン最大級に躍り出た。ピーク時は日額約153万ドルの手数料を生み、TVLは615万ドル超、累計取引量は1万ETH・購入10万件を記録。ただし、ムーンロック・キャピタルのデディック氏は需要の多くがトークン報酬頼みと懐疑的だ。NFT保有者はLPとして手数料を得、プレイヤーは一攫千金を狙う二層構造で、約70%の購入者が当選NFTをFWAトークンに変換している。報酬インセンティブが尽きた後の持続性が正念場となる。

暗号資産(仮想通貨)の世界がまた退屈になってきた——そう思っていた矢先、クリプト界隈のX(旧Twitter)で異様な熱気を放つ新現象が生まれている。その名も「フェイク・ワールド・アセット(Fake World Assets、以下FWA)」。名前からして「偽物の資産」。だが、これがなぜか本物のカネを吸い上げているというから穏やかではない。

正体は、オンチェーン版「ガチャ」ブームの最新形だ。プレイヤーは料金を払って“ガチャ”を回し、ランダムに選ばれたコレクティブル(収集品)を手に入れる。当たれば大金、外れれば紙くず同然——射幸心を煽る仕組みは、まさにあの日本発祥の「ガチャガチャ」そのものである。

驚くべきはその爆発力だ。ローンチからわずか4日で、FWAはイーサリアムのガス代(手数料)消費量において、24時間ベースでチェーン最大の“大食らい”に躍り出た。

ピークを迎えた7月25日には、FWAが生み出した手数料は1日あたり約153万ドル(約2億4,100万円)に達し、大手ステーブルコイン発行会社のテザーやサークルを一時的に飛び越え、イーサリアムのブロックスペース消費量ランキングで上位に食い込んだ。開発元のトークンワークスは、こう豪語している。

「ローンチから4日。フェイク・ワールド・アセットは次の大物だ」

もちろんトークンワークス自身が中立な立場でないことは言うまでもない。とはいえ、預かり資産総額(TVL)は右肩上がりを続けており、7月31日時点で615万ドル(約9億6,900万円)を突破した。手数料収入は現在1日あたり約35万ドル(約5,516万円)まで落ち着いてきたが、これを年換算すると実に約2億6,800万ドル(約422億円)という規模になる。8月1日までの累計では、取引量1万ETH(約2,939万ドル=約29億4,000万円相当)、購入回数10万件を記録した。

この盛り上がりの一部は、初期のFWAトークン報酬(インセンティブ)を狙ったユーザーによるものとみられる。だが、それを差し引いても、このゲーム的な仕組みそのものに本物の熱狂が生まれているのも事実のようだ。

Fake World Assets TVL and fees. Source: DeFiLlama

しかし、このお祭り騒ぎがいつまで続くのか——冷ややかな目を向ける関係者も少なくない。オンチェーン・コレクティブル業界に早くから投資してきたベンチャーキャピタル「ムーンロック・キャピタル」創業者のサイモン・デディック氏は、Magazineの取材にこう語っている。

「ゲーミフィケーションされたコマース(商取引)には非常に強気だ。……ただしFWAに関しては、懐疑的な理由がはっきりある」

デディック氏によれば、現在の盛況の多くは“本物の需要”ではなく、気前の良いトークン報酬に支えられているだけだという。

「あれは完全に、クリプト・ディーゲン(クリプト賭博常習者)がギャンブルと投機をするためだけに作られたものだ」

さて、これは単なる一過性の熱狂で終わるのか。それとも暗号資産業界がついに“本物”を掘り当てたのか——。

そもそも「フェイク・ワールド・アセット」とは一体何なのか

暗号資産業界はこれまで何年もかけて、株式や債券から収集カード、さらにはブラジル産の牛にいたるまで、あらゆる「現実世界の資産」をオンチェーン化しようと躍起になってきた。

トークンワークスが仕掛けたのは、その発想を丸ごとひっくり返すというアイデアだった。作られたのは実在の資産の“デジタル権利証”ではなく、ただのNFT——「フェイク(偽物)」の世界資産である。ユーザーは特定のコレクティブル(たとえばボアード・エイプ)を直接買うのではなく、料金を払ってオンチェーンの“ガチャ”マシンを回す。そして、イーサ(ETH)の価値に裏付けられたNFTがランダムに選ばれる、という寸法だ。

景品として用意されているのは、クリプトパンクス、アズキ、リル・パジーズ、アート・ブロックスなど、数十にのぼる有名コレクションの品々である。FWAは、このブームに新たな捻りを加えた、イーサリアム系プロトコルの最新版というわけだ。

そもそも「ガチャ」とは、1960年代に日本で生まれた自動販売機「ガチャポン(ガシャポン)」の略称で、カプセルに入ったランダムなおもちゃが出てくる仕組みだ。この仕組みはやがてスマホ・ブラウザゲームに輸入され、2010年にリリースされた『ドラゴンコレクション』のルートボックス(くじ要素)が、初期の代表的な“ガチャゲー”としてよく引き合いに出される。一方、現実世界でも似たような仕組みが存在した。ポケモンカードの「ブースターパック」だ。レアリティや価値の異なるカードがランダムに封入されるという、あの懐かしい仕組みである。

このカードは後に、「コレクター・クリプト」「ビージー」「コートヤード」といったプロジェクトによってオンチェーン化(トークン化)された。Magazineが以前報じた通り、こうしたオンチェーン・ガチャは6月だけで過去最高となる3億2,400万ドルもの取引量を記録している。(このうち数百点のトークン化カードは、現在FWA上でラップされ利用可能になっている。)

このコンセプトは週を追うごとに拡大しており、ERC-20トークンをランダムな「トークンパック」に詰め込む実験を行う開発者も現れている。ロビンフッド・チェーン上の「ストックリップ」は、トークン化された株式さえもNFTベースのガチャパックに組み込めることを示した。

Fake World Assets. Source: fwa.fun

DAOローンチパッド「daos.world」創業者で、元ユニスワップのエンジニアでもあるアズフリン氏はこう語る。

「クリプトのアイデアはもう出尽くしたと思った瞬間、また新しい何かが湧き出てくる」

なぜ人はオンチェーン・ガチャに熱狂するのか

Why do people play the lottery? Source: Knowledge at Wharton

ガチャという仕組みは、暗号資産、コレクティブル、そしてギャンブル——この三つを一気に組み合わせたものだ。匿名の暗号資産コメンテーター「2Lambroz」氏は、プレイヤー視点をこう表現する。「あなたはプールに対する宝くじを買っているようなものだ」。

「人は宝くじを楽しむものであり、それを軽視すべきではない」と語るのは、ウォートン・スクールの経済学者ベンジャミン・ロックウッド氏だ。同氏が行った州営宝くじに関する研究によれば、人々は“当選の可能性”そのものよりも、“体験そのもの”に価値を感じているという。

行動ファイナンスの先駆者で、サンタクララ大学教授、著書『A Wealth of Well-Being』の著者でもあるメイア・スタットマン氏は、Magazineにこう語っている。

「『オンチェーン・ガチャ』は、放棄された貸倉庫の中身に入札する行為とよく似ている。多くの人はゴミ同然の中身しか手に入らないが、中にはeBayで転売できる掘り出し物を見つける人もいる。ある人は数十万ドルの価値がある絵画を見つけたこともある。一攫千金への希望と遊び心——この二つが組み合わさっているのだ。それこそが宝くじの本質である」

FWAというプロトコルには、実は表と裏、二つの顔がある。

一つはNFT保有者だ。彼らは流動性提供者(LP)となり、コレクティブルとETHをプールに預け入れることで、そのポジションがプールに残っている間、手数料収入の一部を得る。

もう一つがプレイヤーだ。彼らは料金を払ってランダムに選ばれたNFTを“引く”権利を買い、後になって、それを手元に残すか、それとも紐付いたETHの大部分を“換金”するかを選ぶ。(ブロックワークス・リサーチによれば、現時点で購入者の約70%が、当選NFTをFWAトークンに変換することを選んでいるという。)

2Lambroz氏の説明によれば、LPは自分のNFTが誰かに選ばれてしまう前に、できるだけ長くプールに残って手数料を稼いでくれることを期待している。一方プレイヤーは、スピン代をはるかに上回る価値の景品を当てることに賭けている——という、まさに表裏一体の構造だ。

FWA: The two sides. Source: 2Lambroz

自称「イーサリアム・マキシ(最大主義者)」のマターケル氏は、こう評する。

「この10年余りの暗号資産史の中で、最も“楽しい”NFT・カジノ的プリミティブだ。ユーザーはプレイヤーであると同時に、胴元(ハウス)にもなれる……イーサリアム上の“マネーレゴ”が帰ってきた!」

このブームは本物か、それとも一過性か

デディック氏は、現在の盛況の多くがトークン報酬(インセンティブ)頼みであることを認めつつも、「世代的な理由から、ゲーミフィケーションされたコマースには非常に強気だ」と語る。

「Z世代が最も購買力を持つ世代へと躍り出るほど、買い物という行為そのものがゲーム化し、ドーパミンの分泌を伴うものになっていくだろう」

そしてデディック氏は、この仕組みは“前サイクルの余り物NFT”をランダムに配るよりも、ポケモンカードや高級腕時計、さらにはウイスキーといった、人々がもともと欲しがっている資産にこそ向いていると見ている。

「需要のある資産を、ゲーム的な形で売るという発想には、途方もない可能性を感じる」と同氏。「一方で、もともと誰も欲しがっていない資産に無理やり需要をでっち上げるための“ポンジスキーム作り”には、ほとんど可能性を感じない」

本当の勝負は、目新しさが薄れ、報酬インセンティブが尽きたときにやってくる。それでもユーザーがガチャを回し続けるなら、オンチェーン・ガチャは暗号資産業界がずっと探し求めてきた“一般消費者向けのユースケース”を、ついに見つけたことになるのかもしれない。もしそうでなければ——鮮烈に燃え上がり、そして静かに消えていった、数多の暗号資産的な“失敗作”の山に、また一つ加わることになるだろう。

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