マイケル・セイラー氏の「ストラテジー」、またしてもビットコインを"投げ売り" 165億円分を配当と自社株買いに消える"火の車"の実態

概要:ストラテジー(旧マイクロストラテジー)が8月3日提出のSEC資料で、7月27日~8月2日にビットコイン1,638枚(約165億円)を売却したと判明。売却益は優先株STRCの配当と自社株買いに充当された。今年3度目で年間2番目の規模。保有はなお842,138枚に上る。6月には配当余力の悪化を踏まえ、BTC売却による配当支払いを正式容認し、STRC配当率を12%に引き上げており、今回が新方針の最初の大型実行例。STRC株は基準価格100ドルを約1割下回る水準で推移し、資金調達の悪循環への懸念も指摘されている。

米SECへの提出資料で明らかになった。暗号資産大量保有企業として知られる「ストラテジー」(旧マイクロストラテジー、創業者:マイケル・セイラー氏)が、7月27日から8月2日(日)にかけてビットコインを1,638枚、日本円にしておよそ165億円分を売却していたのだ。今年に入ってからは早くも3度目のBTC売却で、規模としては年間2番目の大きさ。しかも売却益の使い道は、優先株「STRC」の配当金の支払いと、その株の買い戻し――。「ビットコインは絶対に売らない」というイメージで知られてきた同社に、一体何が起きているのか。

165億円分のビットコインが消えた日

問題の売却が明らかになったのは、月曜日(8月3日)にストラテジーが米証券取引委員会(SEC)に提出した臨時報告書「8-K」だった。

売却したビットコインは1,638枚。平均売却単価は6万3,957ドル(約1,008万円)で、総額は1億470万ドル、日本円にしておよそ165億円にのぼる。

この165億円のうち、

  • 約82.6億円(5,240万ドル)は、優先株STRCの配当金の支払い
  • 約82.4億円(5,230万ドル)は、そのSTRC株の自社株買い

それぞれ充てられたという。つまり、稼ぎ頭であるはずのビットコインを切り崩して、株主への配当と自社株買いの原資を捻出した格好だ。

なお売却後も同社は842,138枚のビットコインを保有しており、その取得総額は635億ドル(約10兆円)。それでもなお業界最大級の保有量であることに変わりはない。

過去の売却も振り返っておこう。7月6日には3,588枚(約216億ドル相当、日本円で約340億円)を売却済み。さらに6月上旬にも32枚を売っており、これは2022年の「タックス・ロス・セリング(節税目的の損出し売却)」以来、初めてのビットコイン売却だったと報じられている。つまり、ここ2カ月で立て続けに“聖域”だったはずのBTCへ手をつけていることになる。

ドル準備高「4,000億円」の裏で進む自社株買い

ビットコイン売却と並行して、ストラテジーは株式(MSTR)の売り出しでも2億9,060万ドル(約458億円)を調達したと報告している。この資金の内訳は、

  • 約394億円(2億5,000万ドル)がドル準備金の積み増しに(日曜時点の残高は40億ドル=約6,300億円)
  • 約45.5億円(2,890万ドル)がSTRCの追加自社株買い
  • 約18.4億円(1,170万ドル)が手元現金

創業者マイケル・セイラー氏は月曜日、自身のX(旧ツイッター)で「STRC株を8,120万ドル(約128億円)分買い戻し、ドル資金の“滑走路”を57日延ばして2.3年分にした」と発表している。

言葉だけ聞けば余裕綽々にも聞こえるが、裏を返せば「配当金と自社株買いのために、ビットコインまで売って資金繰りをやりくりしなければならない状況」でもある。

STRC株、目標価格から1割安に沈んだまま

そもそもSTRCとは何なのか。これはストラテジーがビットコイン購入資金を調達するための金融商品のひとつで、永久型の優先株だ。本来は1株100ドル(約1万5,760円)を「基準価格」として設計されている。

ところが月曜日の米国市場、寄り付き前の取引でSTRCは89.40ドル(約1万4,088円)と、目標値から10.6%も安い水準で取引されていた(ヤフー・ファイナンス調べ)。本体の株式であるMSTRも同日、寄り付き前に0.9%下落している。

STRCが基準価格を下回った状態が続くと、この商品を通じた新規の資金調達がやりづらくなる。さらに投資家をつなぎとめるために配当利回りをさらに引き上げざるを得ない、という悪循環に陥りかねない。今回の「ビットコイン売却→配当・自社株買い」という一連の動きは、この悪循環を断ち切ろうとする“防衛策”とも読み取れる。

STRC stock price, 1-day chart. Source: Yahoo Finance

「ビットコイン購入を止めるべき」――専門家からの警告もあった

実はこうした事態を予見していたかのような指摘が、1カ月ほど前に飛び出していた。

暗号資産分析企業クリプトクオントのCEO、キ・ヨンジュ氏は6月24日、「ストラテジーはビットコインの購入を止め、現金準備を立て直し、購入タイミングについて体系的な仕組みを導入すべきだ」とXに投稿。同社の配当支払い余力(キャッシュがどれだけ配当を賄えるかの目安)が、かつての「7年分」から「わずか14カ月分」にまで急落していたことを根拠に挙げていた。

この指摘から5日後の6月29日、ストラテジーはSECへの提出資料で新たな資金調達の枠組みを発表。ビットコインの売却によって配当を賄うことを正式に容認し、STRCの年間配当率を12%まで引き上げた。この時点でのドル準備高は25億5,000万ドル(約4,019億円)だったという。

つまり今回の「165億円分のビットコイン売却」は、その“新方針”が実行に移された最初の大型ケースというわけだ。

結局、「絶対に売らない」はずのビットコインまで動員して配当と自社株買いを支える構図が、ここへきてくっきりと浮かび上がった格好だ。ストラテジーとマイケル・セイラー氏の“ビットコイン一本足打法”経営、今後の資金繰りから目が離せない。

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