FBI幹部が“敵国”の暗号資産1億5700万円をネコババ ChatGPTに移住プランまで相談していた

概要:FBIの監督捜査官だったヤロック被告は、内部システムを使い敵対国に紐づく暗号資産ウォレットから約100万ドル(約1億5700万円)を着服。自首後に解雇・逮捕され、約92万5000ドルは回収された。盗んだ金の運用をChatGPTに相談しており、イタリアやポルトガルでのぶどう園暮らしを勧められていた。過去にも麻薬取締局やシークレットサービスの元捜査官によるビットコイン横領事件が起きている。

FBIといえば、アメリカ国内の犯罪捜査を一手に担う「正義の番人」のはずだ。ところがその内部から、まさかの“泥棒”が出た。

米連邦捜査局(FBI)の監督捜査官だったパトリック・スティーブン・ヤロック被告が、内部システムを悪用し、「敵対国」に紐づく暗号資産ウォレットの認証情報を不正に取得、自分名義のウォレットへと資金を移し替えていたことが、米連邦地裁に提出された文書で明らかになった。

裁判所に提出された調書によれば、ヤロック被告は2024年末から2025年初めにかけて、少なくとも10回にわたり無断で送金を実行。その総額は暗号資産にしておよそ100万ドル(約1億5700万円、1ドル=157円換算)にのぼるという。抜き取った資金の一部は、利回りを狙って暗号資産の運用サービス「スイレンド(Suilend)」に預け入れていたというから、悪知恵は人一倍働いていたようだ。

事が発覚したのは、ヤロック被告自らの「自首」がきっかけだった。先週水曜日に休職処分、そのままクビを言い渡され、金曜日には身柄を拘束されるという異例のスピード転落。捜査当局はバージニア州にある被告の自宅から、端末やシードフレーズ、ハードウェアウォレット「トレザー(Trezor)」を押収し、被告が使っていた「スイレンド」と暗号資産取引所「クラーケン(Kraken)」の口座にアクセス。被告本人の“協力”のもと、およそ92万5000ドル(約1億4522万円)相当の資金を政府管理下のウォレットへと回収したという。

ChatGPTに「1億円あったら」と本気相談

呆れるのはここからだ。今年5月、ヤロック被告はチャットボット「ChatGPT」に対し、「もし100万ドル手元にあったら、利益を最大化するにはどう投資・運用すればいいか」という趣旨の質問を投げかけていたことが、裁判資料から判明した。

これに対しChatGPTが提案したのは、イタリア南部のチレントや、ポルトガルのワイン産地ダン地方といった土地で、ぶどう畑を営みながらスローライフを送るという“優雅すぎる”セカンドライフプランだったという。盗んだ金の使い道をAIに相談していたとは、開いた口が塞がらない。

FBI捜査官の暗号資産着服、実は「前科」あり

暗号資産をめぐる捜査官の着服事件は、今回が初めてではない。2015年には、米麻薬取締局(DEA)の元特別捜査官カール・M・フォース受刑者が、ビットコインでおよそ70万ドル(約1099万円)を横領。有罪を認め、懲役6年半の判決を受けている。

また同じく2015年、米シークレットサービスの元特別捜査官ショーン・W・ブリッジス受刑者も、ビットコインでおよそ35万ドル(約5495万円)を窃取し、有罪を認めたうえで懲役6年の判決が下された。この2つの事件は、いずれもダークウェブの闇市場「シルクロード(Silk Road)」の捜査に絡んで発覚したものだ。

正義を執行する立場の人間が、暗号資産という「新しい金脈」を前に、次々と道を踏み外していく——。今回のヤロック被告のケースは、その最新かつ最も“間抜け”な一例として記憶されることになりそうだ。

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