金融の世界の“心臓部”とも言える国債取引に、暗号資産と同じ技術が乗り込んできた。
三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)、三菱UFJモルガン・スタンレー証券、三菱UFJ信託銀行、三菱UFJ銀行——メガバンクグループの中核4社は8月13日、日本国債(JGB)のレポ取引を「オンチェーン化」する実証実験(PoC)で協業を始めると発表した。
使うのは、機関投資家向けに専用設計されたブロックチェーン「カントン・ネットワーク」。開発元の米デジタルアセット、そしてブロックチェーン企業のProgmat(プログマ)とタッグを組む、いわば“銀行×ブロックチェーン企業”の混成チームだ。
そもそも「レポ取引」とは、国債などを担保にお金を貸し借りする、金融機関同士では“日常茶飯事”の資金調達手段。その市場規模は極めて大きく、ここが暗号資産と同じ土台に乗るとなれば話は小さくない。
4社が狙いに掲げるのは大きく3つ。ひとつは、取引の一連の流れを自動化して事務コストを削ること。ふたつめは、24時間365日、日中でもリアルタイムで決済を完了できるようにすること。そして3つめが、資金と資本をより効率的に使えるようにすることだ。平たく言えば「銀行同士のお金のやり取りを、もっと速く、もっと軽くする」という話である。
今回の実証実験は、金融庁が2026年2月に支援を決めた「決済高度化プロジェクト(PIP:Payment Innovation Project)」の枠組みの一環。ブロックチェーンやステーブルコイン、トークン化といった新しい決済技術を、フィンテック企業や金融機関が“実験台”として試せるよう金融庁がお墨付きを与える制度で、今回の国債レポ取引もその一件というわけだ。
実は“出戻り”組? MUFGとブロックチェーンの因縁
MUFGにとって、ブロックチェーンへの挑戦は今回が初めてではない。2023年6月には、ステーブルコイン発行基盤「Progmat Coin」を打ち出し、複数の銀行が円建てステーブルコインを複数のパブリックブロックチェーン上で発行できる仕組みを整えている。
その一方で、2022年2月にはブロックチェーン決済プロジェクト「GO-NET Japan」から撤退した過去もある。当時はステーブルコイン事業に経営資源を集中させる“選択と集中”だったとされるが、裏を返せば、一度は手を引いた技術領域に、形を変えて舞い戻ってきたことになる。
「日本で最も手堅い資産」とも言われる国債までがブロックチェーンに乗る時代——メガバンクの本気度が試されるのは、まさにこれからだ。

