ステーブルコイン発行大手テザーの元最高投資責任者(CIO)、リチャード・ヒースコート氏が、同社に保有する1.26%の持ち分の一部売却を模索している。事情に詳しい関係者の話として、ブルームバーグが報じた。
ヒースコート氏は今年3月、テザーの最高投資責任者を退任した。テザーの投資ポートフォリオを差配してきた人物だが、現在は助言役に回っている。ブルームバーグによれば、今回売却が検討されているのは、同氏が持つ1.26%の所有分のうち一部に限られるという。
テザーは、世界最大のステーブルコインであるUSDt(USDT)を発行している。デファイラマのデータによれば、USDTの流通供給量はおよそ1840億ドル、日本円にして約29兆9000億円。ステーブルコイン市場全体の約59%を占める、まさに“ドルの影武者”のような存在だ。
今回の売却計画は、非公開企業であるテザーの所有構造を垣間見る、きわめて珍しい機会となる可能性がある。テザーは上場していないにもかかわらず、暗号資産業界で最も利益を生む企業の一つにまで膨れ上がった。だからこそ、その株式の値付けや買い手には、業界の視線が集まる。
一方で、テザーは欧州で規制圧力にもさらされている。欧州連合(EU)の暗号資産規制「MiCA(ミカ)」に準拠しない方針を取ったことで、USDTはMiCA認可を受けたプラットフォームから相次いで上場廃止となっている。今月にはレボリュートも、同ステーブルコインを自社プラットフォームから削除すると発表した。
暗号資産企業、IPOをにらむ
テザーの最高経営責任者(CEO)であるパオロ・アルドイーノ氏は、同社について「上場する必要はない」と明言している。だが、暗号資産業界の他社に目を向ければ、上場準備の足音は確実に聞こえてくる。
暗号資産取引所クラーケンは、株式公開に向けた布石をいくつも打ってきた。フォーチュンは2025年9月、同取引所が企業価値150億ドル(約2兆4400億円)で5億ドル(約812億円)を調達したと報じた。これにより、クラーケンがIPOに向けて準備を進めているとの見方が一段と強まった。
Source: Paolo Ardoino
同社はさらに2025年11月、米証券取引委員会(SEC)に対し、IPOに向けた登録届出書の草案を非公開で提出したと発表している。ただし、その後ブルームバーグは、同社が人工知能(AI)の活用拡大に伴う人員削減を進めたことを受け、IPO計画が2027年まで後ずれする可能性があると報じた。
韓国の暗号資産取引所ビッサムも、今年4月にIPO延期を発表している。同社は過去の規制上のつまずきを踏まえ、会計方針や内部統制の強化を進めており、上場は2028年以降に持ち越される見通しだ。


