バイナンスに預けなくても取引可能に アンカレッジ提携で機関投資家の“取引所リスク”を回避へ

概要:今回の統合が狙うのは、機関投資家マネーが暗号資産市場への本格参入をためらう最大の障害のひとつ、すなわち取引所のカウンターパーティーリスクである。

アンカレッジ・デジタルが、同社の取引所外決済プラットフォームをバイナンスと統合した。これにより、機関投資家の顧客は、暗号資産や現金をバイナンスに直接預け入れることなく、米連邦認可の暗号資産銀行であるアンカレッジの適格カストディに保管したまま、バイナンスで取引できるようになる。

今回の枠組みでは、機関投資家はアンカレッジに保管している暗号資産、または米ドル預金を担保として使い、バイナンスの証拠金要件を満たすことができる。つまり、取引のために事前に資産を取引所へ移す必要がない。両社によれば、このモデルはカストディと取引執行を切り離すもので、決済時まで資産を独立したカストディアンのもとに置いておけるという。

このサービスはまず、一部の機関投資家向けに提供される。アンカレッジ・デジタルの「アトラス」プラットフォームにとっては、初の取引所外決済の導入事例となる。同社によれば、アトラスはカストディを基盤としたインフラを通じ、機関投資家向けの取引、決済、融資、担保管理を支えるために設計されたものだ。

今回の提携が狙うのは、暗号資産市場に機関投資家マネーが本格流入するうえで、長らく障害となってきた問題である。すなわち、取引所のカウンターパーティーリスクだ。従来のように取引前に資金を取引所口座へ入れておく必要をなくすことで、暗号資産取引は、伝統的金融市場で長く使われてきた「カストディと執行の分離」モデルに一歩近づくことになる。

なお、今回の提携に関する金銭的条件は公表されていない。

暗号資産取引所、取引所外決済の提供を拡大

2026年に入り、機関投資家向けの暗号資産取引プラットフォームでは、取引所外決済の導入が勢いを増している。

4月には、ビットメックスがゾディア・カストディと提携した。これにより、機関投資家の顧客は、担保を取引所上ではなく分別管理されたカストディに置いたまま、デリバティブ取引を行えるようになった。ビットメックスの統合では、トレーダーは担保をゾディアのカストディに残したまま、無期限スワップや先物にアクセスできる。担保情報は取引のためにミラーリングされる仕組みだ。

ビットメックスは、この構造によって取引所口座への事前入金が不要になり、資本効率が高まると説明している。また、カストディ先と取引所の間で資産を動かす際に生じるオペレーション上のリスクも軽減できるという。

6月には、ビットゲットも同様のモデルを採用した。ファイアブロックス・オフ・エクスチェンジとの統合である。これにより、機関投資家の顧客は、資産を取引所へ移すことなく、MPC、すなわちマルチパーティ計算に基づくウォレットから取引を実行できる。資産はトレーダーが管理する担保保管庫に置かれたままだ。

Source: BitMEX

ビットゲットによれば、同プラットフォームは顧客資産を自ら預かることなく、取引口座に十分な担保があるかをリアルタイムで確認できるという。

クーコイン・インスティテューショナルも今年前半、機関投資家向けのカストディサービスを拡大した。1月には、セフーの「ミラーX」プラットフォームを統合している。このシステムでは、機関投資家の顧客はデジタル資産を第三者カストディに保管したまま取引できる。資金は取引用にミラーリングされ、4時間ごとにオフチェーンで決済される仕組みだ。

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