自宅のテレビや家電にAIが入り込み、人の手を借りずに増殖していく。そんな事態が現実になるかもしれない。人工知能(AI)企業アンソロピックが、自己複製する自律型AIシステムについて、コンピューターウイルスのように利用者の機器へと広がる恐れがあると警告した。
標的になり得るのは、アンドロイドTVやスマート家電、カメラなど、身近なネット接続機器だ。基本的な計算能力を備えながら、セキュリティーが手薄な機器を、制御を離れた「AIワーム」が自律的に狙う可能性があるという。同社のフロンティア・レッドチームに所属する研究者、ウィリアム・ジョウ氏とダニエル・フリーマン氏が、10月12日公開の報告書で指摘した。
両氏によれば、小型AIモデルは「市販のIoT(モノのインターネット)機器上で自己複製できるだけの能力を、あと数カ月で獲得する可能性がある」。厄介なのは、広がった後にどう止めるかだ。「一括して停止させられる中央の拠点がない」ため、対処の難しい脅威になり得るという。
今回の警告の背景には、AIの数学的な能力向上を巡り、再び強まっている懸念がある。将来、AIが暗号資産ウォレットに使われる暗号署名を破り、ビットコイン供給量の約3分の1を脅かす可能性があるというのだ。
ブロックチェーン分析企業グラスノードの共同創業者、ラファエル・シュルツェ・クラフト氏は10月8日のXへの投稿で、世界のビットコイン供給量の約3分の1に当たる626万BTCが、AIモデルや量子コンピューターによる暗号解読のリスクにさらされたアドレスに保管されていると説明した。ただし、このうち433万BTCは、アドレスの再利用がリスクの原因だとしている。これらを新しいウォレットに移せば、再利用に起因するリスクは解消できるという。
その前日の10月7日には、イーサリアム研究者のジャスティン・ドレイク氏も警鐘を鳴らしていた。AIの急速な進歩によって、暗号資産ウォレットを守る「楕円曲線デジタル署名アルゴリズム(ECDSA)」が、従来の想定より早く破られる恐れがあるとして、利用者に新しいウォレットへの移行を呼びかけた。
もっとも、この見方には異論もある。暗号資産投資会社ドラゴンフライのマネージングパートナー、ハシーブ・クレシ氏は、こうした警告を「暗号技術を巡る終末論」と批判。トークンを新しいアドレスへ移すだけでは、この脅威に対する根本的な解決にはならないと述べている。

