2023年で最大のイベントか： Mt. Goxのビットコイン弁済が市場に与える影響【有識者に聞く】

　　Helen Partz

　　2023年07月12日 18:30

　　2023年で最大のイベントか： Mt. Goxのビットコイン弁済が市場に与える影響【有識者に聞く】

　　仮想通貨コミュニティが2024年のビットコイン半減期を活発に議論する中、今年はもう1つの潜在的に大きな市場イベントがある。

　　ハッキングされたビットコイン取引所マウントゴックス（Mt. Gox）の管財人は、2023年10月末までに、最終的に取引所の債権者に弁済する予定だ。もしこれが実現すれば、仮想通貨市場は大きな影響を受ける可能性があり、一部の業界関係者はこの可能性に同意する。

　　2010年に設立されたMt. Goxはかつて世界最大のビットコイン取引所で、その破綻前には全BTC取引の約70%を処理していたと推定されている。

　　今はなきこの取引所は、2014年のハッキング事件で85万 BTC（全発行ビットコインの4%）を失い、Mt. Goxを史上最大の仮想通貨破綻の1つにした。債権者への弁済は9年後の今でもなされていない。

　　現在のMt. Goxの弁済期日はおよそ3ヶ月後に設定されているため、コインテレグラフはいくつかの仮想通貨業界の関係者に取材し、Mt. Goxによる弁済から何を想定すべきかを調べた。

　　BTC弁済は下落圧力を引き起こす

　　Mt. Goxの弁済は一大イベントであり、市場に大きな影響を及ぼすことは確実だと、ホエールワイヤーの創設者兼CEOのジェイコブ・キング氏は考えている。

　　キング氏は、約10年前に自分たちのビットコインを失った多くの債権者は、それがついに返ってきたら少なくとも一部のBTCを売る可能性が高いとコインテレグラフに語った。

　　「この売却注文の急増は、価格に下向きの圧力を生み出し、市場で下落局面を引き起こす可能性がある」と彼は言う。キング氏はまた、Mt. Goxの弁済プロセスには多くの長期遅延があったことを挙げ、これが投資家の間で「幻滅感」を生み出し、市場への信頼を損なっていると指摘した。

　　「投資家たちは何をするのか、という簡単な問題だ。過去1年間、我々は売りよりも買いを多く見てきたし、Mt. Goxで損をした多くの人々は仮想通貨から離れている。そういったことを踏まえれば、彼らがさらに数年にもわたって保有し続ける可能性は非常に低いだろう」

　　Mt. Goxの債権者の一部は、弁済が完了すればビットコイン市場が売り圧力に直面する可能性があると認めている。しかし、自身をMt. Goxの債権者と称するトレーダーによれば、多くの申請者は引き続きBTCを保有し続ける可能性が高い。あるトレーダーは次のように述べた。

　　「我々がコインを手に入れたとき、我々全員が保有し続けると思う。しかし、これらのコインが市場で売却されるというニュースが世界に広まったとき、債券者でないがコインを持っている人々は、価格が下がるのを恐れて売却するだろう」いくら弁済されるのか？

　　Mt. Goxは、世界中の1万人以上の債権者全員に10月末までに弁済を行う予定だ。取引所が85万 BTCを失ったわけだが、Mt. Goxは一部の資金しか回収できなかったため、ハッキングによる損失総額の一部のみを弁済することになる。

　　2019年の報告によると、Mt. Goxは債権者に14万2000BTCと、フォークした仮想通貨、ビットコインキャッシュ（BCH）で14万2000BCHを保有している。倒産した取引所はまた、日本円で現預金690億円も保有する。支払いは法定通貨と仮想通貨の組み合わせで行われ、各投資家と個別に支払いが調整される。

　　Mt. Goxの資金弁済は大規模なイベントになるだろうと、ホエールアラートの共同創設者フランク・ヴェールト氏も同意している。しかし、それが市場にどのように影響するかは、資金がどのようにリリースされ、メディアがそれをどのように報じるかに大きく依存するだろうと、彼はコインテレグラフに語った。

　　「確かに一部の人々がようやく換金できることを喜ぶだろうが、大量の売却が起こるとは思えない」と彼は述べた。同様のイベントが仮想通貨業界で以前に見られたかどうかを尋ねられたとき、ヴェールト氏はこれまでにそのような規模のイベントは一度もなかったと述べた。

　　主要な債権者の一部、例えばBitcoinicaやMtGox Investment Fundsは、回収資金をビットコインで受け取ることを選んだと報告されている。

　　ツイッターのMt. Goxの残高ボットからのデータによると、Mt. Goxの管財人は現時点で全ての既知のアドレスで13万5890BTCを保有している。

　　Mt. GoxのBTC弁済でも影響は「すぐ沈静化」

　　多くの仮想通貨愛好家たちは、Mt. Goxの弁済が大規模なイベントになると信じているが、一部の懐疑論者たちは、潜在的な影響がおそらくすぐに沈静化するだろうと考えている。

　　Mt. Goxの債権者に弁済されるビットコインの量は、少なくとも15万2333BTCを保有しているビットコイン支持者であるマイケル・セイラー氏の保有量と比較可能できる。

　　「どちらにせよ、それはそんなに多くないように思える」とクオンタム・エコノミクスの創設者であるマティ・グリーンスパン氏はコインテレグラフに語った。弁済されるビットコインの現在の価値について述べたグリーンスパン氏は、現在の1日当たりのオンチェーン取引高がはるかに大きいことを強調した。

　　「1日あたりのオンチェーン取引高は平均で120億ドル、取引所の取引高は1日あたり約180億ドルと報告されている」と彼は述べ、「だからこれは市場が相対的に短い時間枠で吸収できるものだろう。私はこのイベントを巡る憶測により売り圧力が生じるかもしれないとは考えている。多くの人々は基本的な算数を知らない」と彼は付け加えた。

　　グリーンスパン氏はまた、Mt. Goxのビットコインがたくさんの人々に分配されることを強調し、「大量分配イベント」としてネットワークにとって非常に良いことだとも語る。

　　「たくさんのOGが再活性化されるだろう。彼らの中には売却して手放す人もいるだろうが、私は多くがセルフカストディの熱烈な提唱者になる方に賭けたい」と彼は言う

　　彼はまた、Mt. Gox関連のFUDが「多年にわたり市場を苦しめてきた」と述べ、それが「ようやく終息するの良いことだ」と話す。